原子核物理学部門



  大学院理学研究科物理学専攻の教職員や院生、理学研究科附属原子核実験施設の教職員、
核物理研究センターの教職員、理学部物理学科学生によって利用され、以下のような研究がされ
ています。


 宇宙に存在する物質の量(質量)は、従来考えられていた光等により観測されている量の10倍
から100倍以上存在していることが、最近の様々な方法での測定などによりわかってきました。こ
の見えない物質は暗黒物質と呼ばれておりその正体はいまだはっきりしていません。
  この暗黒物質は我々の銀河系にも存在しており(ダークハロー)、今も皆さんの体を突きぬけて
いる可能性もあります。我々はその正体がウィンプ(WIMPs)と呼ばれる素粒子であると考え、そ
の探索実験を行っています。また、中性微子(ニュートリノ)と呼ばれる素粒子は従来、質量を持た
ないと考えられていましたが、最近日本のスーパーカミオカンデを始めとした幾つかの研究グルー
プがニュートリノにも質量がありそうだという結果を出しました。また、標準理論を超える理論の中
にはニュートリノが質量を持つ可能性を示唆するものもあります。我々はこれらを検証するために
二重ベータ崩壊実験を行っています。
  我々はこれらの実験を同時に行うための装置(ELEGANT VI)を開発し、奈良県大塔村の地

下実験施設(大塔コスモ観測所)に設置し測定を行っています。この装置はフッ化カルシウム結晶
(螢石)を中心に建設されており、結晶中に含まれるフッ素19でダークマターの検出、カルシウム
48で二重ベータ崩壊の研究を行なっています。この結晶は蛍光検出器(シンチレータ)になってい
て、ダークマターとの相互作用で反跳されたフッ素原子核や二重ベータ崩壊したカルシウム原子核
から放出された2個の電子により微弱な蛍光を発し、それを光電子増倍管(PMT)で信号として捉
えます。

  これらの信号は非常に微弱で稀なものなので、にせものである「雑音(バックグランド)」を極力
減らす必要があり、様々な工夫をしています。地下実験室で測定を行うのも宇宙線などによる雑
音を減らすためです。また、通常の物質は微量の放射性不純物を含んでおり、そこからの放射線
が雑音になります。そこで、我々は放射性不純物の極力少ない物質で検出器を製作するべく、ここ
RIセンターに設置された
低雑音の微量放射線検出器(ELEGANT III)で様々な物質の放射性不
純物の量を測定し、検出器の改良に役立てています。

                


               
ELEGANT VI 検出器の概念図